『世界から見た日本、日本から見た世界』☆第一部☆

掲載日:2017.01.18

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☆特別インタビュー☆
 2016年4月衆院北海道5区補選では野党共闘が実現しただけでなく、老若男女、多くの市民からたくさんの支持が寄せられました。その中には、海外に留学していた大学生もいました。今回は、彼らが見た日本の政治をテーマに取り上げ、紹介します。
(全5回+番外編の連載となります。内容は2016年11月にイケマキニュースvol.2として発行されたものになります。)
『第一部』  理 解 ≠ 賛 同
− きっかけ −
内田:僕の場合は、大学院に行ってもまだ親のスネをかじっている状態は嫌だったから奨学金を借りたかったんです。でも日本だと大学院での奨学金制度が非常に限られていて、それに将来は企業で働く前提で大学院に行くのはつまんないと思っていました。そんなときに偶然にマサチューセッツ工科大学の卒業生と話す機会があって、アメリカだと博士課程は奨学金出るよ、しかも給付制の、と。今はその奨学金で自立した生計を立てている感じです。
ヤス:僕は大学院での移民の研究のために、今年の夏までの2年間フランスに住んでいました。日本にはまだ移民・難民があまりいないけど、外国人労働者を雇用するって話がじわりじわり政策で進んでいるから、将来的にとても大切な話なんですよね。だから移民大国のフランスで、白人がほとんどいないような街に自ら住んでみて、いろいろ勉強になりました。そんな国だからいつもいろんなところで異文化のお祭りが開催されていますよ。例えば、中国の旧正月を祝う行事とか、イスラームの祝日とか、ユダヤのお祭りとか。日本にいたら触れることのなかったイベントに触れることもできました。
うみ:海外の大学に行くとほんとうにいろんな人種の人と出会いますよね。私が日本を出たのは、福島第一原発事故から非難のためでした。2011年4月だったから14歳でした。そのときはそれ以外の選択がなかったという感じがしたけれど、自分で選んだ道でした。日本を外から冷静に見られるような場所にいたかったんです。それと自分の友達や家族がいつか日本にいられないって選択をしたときのための居場所を確保したいという思いが大きかったです。
わこ:私もうみちゃんと同じ理由で日本の高校を自主退学してオーストラリアの高校に編入しました。海外へのあこがれってのも濃かったですけどね。でもなかなか友達にほんとうの留学理由は言えなかったです。
内田:日本人はあまり政治の話をしないから、海外に行ってもなかなか自分からはそういうの話せないのが染みついてるような気がします。僕自身、政治の話をするのが好きだっていうのもあると思うんですけど、アメリカでは日常会話の中にぽんぽん政治の話は出てきますよ。
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− 友達と政治 −
内田:今だと大統領選の話がもっぱらですね。僕の周りで共通しているのは、ドナルド・ドランプは色々とヤバいし、ヒラリー・クリントンのほうがマシだよねって意見ですかね。でもヒラリーの利権重視の外交手法や、中東地域への空爆とイスラエルのパレスチナ政策を支持する彼女の姿勢を僕は容認できないから、「トランプには投票できない、けどヒラリーにも入れない」って友達に言います。これは自分の民主主義に対する考え方が影響しているわけだけど、俺は内田樹氏の民主主義に関する定義が好きなんですよね。「民主主義とは物事を効率よく決める制度ではない。民主主義の下では選挙結果は、“国民”の総意であった、したがってその帰結の責任を負うのも国民である。」と。つまり、ヒラリーに投票した結果彼女の軍事政策により諸外国で民間人を殺害された際、その究極的責任は国民が負う、ということです、これは日本の第2次世界大戦に対する戦争責任にも相通ずるものがあって、当時の大日本帝国の決断が国民の総意であった、従って今日になっても戦争犯罪の責任を負うのは国民であるわけです。
わこ:日本でだと、政治の話をして相手と意見が違ったときいやな雰囲気になるけど、アメリカではどう?
内田:いや、ならないよ。理解を示すのと賛同するのとは違うからさ。君の言い分は理解できるけど僕は賛同しないよってかんじですね。ここを分けて考えられないと議論が感情論になったりして日本の現状のように全く議論にならない。
ヤス:そう言われると賛同はできなくとも理解はできるという道が日本にはないですね。
わこ:だから日本で友達と政治や社会の話をしても会話が成り立たないんだね。言葉のキャッチボールがなくて、多くが「へえ」とか「よく考えてて凄いねぇ」とかで終わってしまう。会話が成り立つには自分の意見がないとダメなんですね。だから日本人がどれだけ政治に対して自分の意見を持っていないか、こういうときによく明確になって残念になります。自分たちの生きる社会のことなのにね。身近なことから政治と結びつけてもっと考えて、意見を持つことに自信を持ってほしいです。