『世界から見た日本、日本から見た世界』☆第四部☆

掲載日:2017.01.30

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☆特別インタビュー☆
 2016年4月衆院北海道5区補選では野党共闘が実現しただけでなく、老若男女、多くの市民からたくさんの支持が寄せられました。その中には、海外に留学していた大学生もいました。今回は、彼らが見た日本の政治をテーマに取り上げ、紹介します。
(全5回+番外編の連載となります。内容は2016年11月にイケマキニュースvol.2として発行されたものになります。)
『第四部』  或る / 在る / 有る
− 或る弱さについて −
ヤス:フランスでは北アフリカからの移民が多いんだけど、彼らは安い労働力として買われ、その後フランスの景気の悪化によって大量に切り捨てられてきました。大都市周辺には、そういう人たちのとても貧しい郊外地区があります。そして、その人たちへの差別と格差はとても激しいです。これはフランス社会の大きな課題ですね。そういうところを見てると、対等な人間として移民や難民を迎え入れるのではなく、安価でいつでも切り捨てられる労働者として、外国人の受け入れを広げようとしている日本が、同じ道を辿ろうとしてるような気がしてなりません。世界中で多くの国が、今日のような資本主義のあり方に限界を感じて、社会的にも経済的にも、閉塞感に包まれています。世界でもみんな、このままじゃだめだってなんとなく思ってる人が多いように感じます。だから、急な改革とか変化を求めて、内容が何も無くても奇抜で斬新に物事を進めてくれそうな政治家が、熱烈に支持されるような傾向が目立つようになった気がします。
内田:そうだね。アメリカ大統領選のトランプとか、日本では安倍首相や橋下元大阪府知事とか。どういうわけか全世界において多くの個人が自信喪失している感があるんだよね。資本主義社会は経済が悪化すると社会の雰囲気が落ち込むんですよね。いま世界がちょうどそうなって、自信喪失ってムードなんだと思います。そこに「私が引っ張っていく!」とか「我が国、我が民族は優れているんだ!」みたいなことを主張する人が現れると、言ってることが馬鹿げてても「なんかやってくれそう」って状況に変化への期待を乗せたり、自信喪失している空虚感を埋めてくれて多くの人は支持してしまうんですよ。実際世の中をよくするのは個人ひとりひとりの行動からなのであって、リーダーに身を委ねて変革を求めるのは民主主義じゃないと思います。そんなの独裁者を選んでるのと一緒じゃないですか。
わこ:日本でヘイトスピーチがここ数年で急激に増えたのもそういう自信喪失によるものなのかもしれないですね。景気が低迷しててアベノミクスも失敗して、格差が広がった社会の中でやっぱり目の前がもっと暗くなった人が多いと思うんです。それでも生きていかなきゃならない。そうした中、自尊心を保つために、自分よりも弱い立場にいる人たちを見つけて糾弾する人が出てきたのだと思います。その矛先が在日外国人だったり障がいを持つ人たちだったり。人となにか違うものを持っているということがなかなか受け入れられない日本社会ではそういう人たちが弱者として定義づけられてしまうのですよね。これは日本に限ったことではないですが。
うみ:うんうん、私もみなさんと同じ意見です。私の友達で、精神的に辛かったり、辛かった過去がある子が結構いるんだけど、それも、多様性が認められないことや社会の自信喪失ムードの影響があるのではないかなと思います。あの相模原の障がいを持った人たちが殺された事件とかも、その一つの象徴だと思います。社会的に生産性がない命は生きる価値がないと。最近よく、今の日本とドイツのナチス社会が比べられることがあるけれど、ナチスが台頭してきた時、障がい者、老人それにホームレス、いわゆる弱者が一番最初に殺されました。そういう意味でも、少し似ているのかもと怖くなります。
内田:ナチス・ドイツ下でガーレン司教が遺した言葉で「社会的弱者を殺しても良いとするならば、我々健常者も老いて弱った時に殺されるだろう」ってあるのをいま思い出した…。
うみ:そう。同じようなことって歴史的に繰り返されてますよね。そして、その国限定じゃなく、世界各地で起こるように思います。だからこそ、どう考えていけばいいかって思った時に、大きな視点から考えることが大切なのではないかと思います。どの国も世界の一部だから、ある国の問題はすべての国の問題でもあるんです。全世界共通して分かりやすい問題では、貧困がありますね。最近貧困が広がっていると言われるけど、日本の場合、100円ショップとか安い衣服とかファーストフードが普及してて、パッと見ただけでは貧困状態がわからない社会になってますよね。だからみんな結構ぎりぎりの生活してても、スマホを持ってるからとか。お買い物に行ってるからとか、娯楽を楽しむ隙もないほどにまで追い詰められないと一般的に「貧困」と認められないようになってしまいました。そういう「相対的貧困」と呼ばれる状況に追い込まれている人たちが増えてますね。
内田:娯楽まで含めたハッピーな状況が人間らしい生活なのであって、そういう生活が送れる状況じゃないとだめなんだよね。日本は生存権があってないようなものだね。