『世界から見た日本、日本から見た世界』☆第五部☆(最終回)

掲載日:2017.01.31

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☆特別インタビュー☆
 2016年4月衆院北海道5区補選では野党共闘が実現しただけでなく、老若男女、多くの市民からたくさんの支持が寄せられました。その中には、海外に留学していた大学生もいました。今回は、彼らが見た日本の政治をテーマに取り上げ、紹介します。
(全5回+番外編の連載となります。内容は2016年11月にイケマキニュースvol.2として発行されたものになります。)
『第五部』  共 生
− 隣のホームレス −
うみ:私の住んでる町に、いつもいるホームレスのおばさんは、独創的な絵と一言メッセージを自分で書いたはがきを売っているの。値段は出せる分だけって言っていて、だいたい2ドル(150円)くらいでみんな買っているみたい。面白いし、お互いハッピーな気持ちになるからいいなぁと思う。そして、24時間営業のマクドナルドとかがホームレスの人たちがそこで寝てもいいよと場所を提供したりもしています。国の救済制度もあるけどそこからこぼれ落ちる人も多いです。そういう人は、車中泊をしてる人も結構います。
わこ:私も車中泊はオーストラリアにいたころよく見かけました。ニュージーランドではホームレスにスーパーの帰りに食べ物を分けてあげたり、渡すものがなくても「やぁ、元気かい」とか久しぶりに見かけたホームレスには最近どこに行ってたのか尋ねたり、「今日は天気がいいね」とかまるで友達のように話しかける人が少なくないです。でも、白人よりもマオリの人のホームレスの方が圧倒的に多いです。
うみ:マオリ人口はニュージーランド全体の13%なのに対して、ホームレスの割合だとマオリ人が58%を占めてるって統計が出てるけど、明らかにおかしいよね。
ヤス:住む地域とか就職に格差とかがあるのかな。
わこ:あるみたい。貧しい地域にはマオリの人が多いという統計が出ています。私の住む町でも、立派な家が並ぶ地域と古い安い家が並ぶ地域があって、マオリの人は比較的後者に住んでいます。教育を含む様々な国の優遇政策はあるけれども、実際に進学する人は少ないようです。仕事に関しても、私が生活している中で見かける肉体労働者は、マオリの人が多いです。
内田:ニューヨークのホームレスは負い目がまるでないです。ふつうに「お金ちょうだい」みたいなかんじで、僕はむしろそれが好きです(笑)。ホームレスの人種構成を見ると、圧倒的に黒人が多いね。地下鉄に乗っていても、おそらく地下鉄(ニューヨークに地下鉄は無休で運行しているから理論上降車する必要はない)で寝泊まりしているんだろうな、という黒人に巡り合うことは割と頻繁にある。
うみ:もちろん、道で生活するのは大変だけれど、ホームレスになっても「人生終わり」ではなくて、町の人たちが助けて生きていけるような社会はいいなと思います。
内田:アメリカのホームレスは退役軍人が多いんです。戦場で身体的に負傷したり、心に傷を負ったりPTSDになってしまったり、単純に退役後職にありつけなかったり。アメリカの軍人は使い捨て駒のように扱われています。だけど元軍人のホームレスが絶えないのは、所得格差によって軍人にならざるを得ない状況に置かれてる人がたくさんいるからなんです。給料も出るし兵役中は食事も出るから、教育もまともに受けられなかった貧困層には使い捨て駒になるとわかっててもその選択しかないんです。
ヤス:フランスではホームレスだけでなく、段ボールやビニールシートでできたボロボロの家が何十軒も立ち並ぶスラム街も、僕の家から徒歩一分のところにありました。パリにはたくさんの難民がやってきていて、あるところでは歩道の端から端までたくさんのホームレスの家族が暮らしています。もちろん国の救済制度もあるんですけど、なんせホームレスの数が多すぎるから追い付いてないんですよ。だけど、それをカバーするためにいろんな市民団体がいたるところで炊き出しなどの支援をしています。あとは国の法律でスーパーの廃棄食品は100%寄付しなければならないというルールがあって、あらゆるものが利用されるシステムはできてるんだけど、経済状況が本当に悪いから、まだまだ課題は多いです。それとさっきのわこちゃんのとこみたいに、みんな当たり前のようにホームレスとの距離感が近いですね。日本みたいな生活保護バッシングとかもないです。フランス政府は生活保護や失業手当を日本政府よりもずっと簡単に出すけど、需給者を責める人はいません。それは当然の権利だし、みんないつか自分もそういう状況になるかもしれないという認識があるからだと思います。
うみ:だけど、黒人に対する差別はひどいんだよね?
ヤス:そう、黒人もだけど、特にさっきも話した北アフリカのアラブ人移民に対する差別も、とても根深い。名前がアラブ風だと雇用しないっていう企業もたくさんあって、彼らに対する就業差別がひどいよ。でもフランスの若者の失業者が27%まで上がっててみんな差別を糾弾できる余裕がないのも事実。でもブラック企業に対する社会の目はとても厳しいです。フランスのブラック企業は、日本では完全にホワイトっでいうレベルだったりします(笑)。
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− 信じてみたい −
内田:人種差別とLGBTQへの差別がなくなってほしいな。あとは「大学-企業就職-結婚」っていう当たり前のようなレール上の人生を歩まない選択をしたり、歩めなくてもいいんだよって、どんな人生の歩み方でも受け入れられる社会になってほしいと思います。いろんな人がいていいし、それを受け入れ、また楽しめる社会がいいんじゃないですか。僕は愛国心とかどうでもいいと思ってるけど、別にすごく自国を愛する人がいてもいいし、自分や人とは違うから排除するんじゃなくて多様性を受け入れてみんなで生きられるようになってほしいです。
ヤス:ほんとに僕も多様性が大切だと思います。いろんな人がいてもいい社会ってほんとに素敵だよね。
わこ:私も結構ふたりに賛同ですね。日本ではLGBTQへの差別をしてるって意識の人は少ないんだろうけど、同性同士が遊びでじゃれあってるだけで「ホモ」や「レズ」って煽られることがいまだにあると思います。それも海外では完全に差別なんですよね。イタリア人はみんなダンディーだ、とかの何々人はこういう生活だ、みたいなのもアウトなんです。だけど日本では差別も意識も固定観念として出てきます。そういうのも一から自問自答して、思慮を深めてほしいと思います。多様性は古井固定観念も拭い去ることによって、受け入れられていくものなんじゃないですかね。
うみ:池田まきさんの「誰一人おいてきぼりにしない」ってスローガンとても好きです。私は車いすで生活してるのですが、社会の中で、置いて行かれやすい立場の人がホントに置いて行かれちゃう社会はレベルが低いと思います。今の社会は有能と言われる人たちに合わせて回っていることが多いけれど、資本主義社会的な生産性がない人たちも含めて回っている社会こそ成熟した社会だと思っています。
ヤス:うん、池田まきさんのスローガンはほんとにいいと思う。
内田:あとは男尊女卑と性別役割分担がなくなってほしい。そんなの女の人も苦しいし、男の人も生きづらいはずです。もし、僕が家庭を持って男の自分だけが家計を支えなきゃいけないっていうルールがあったとしたらそんなの嫌ですもん。「普通の人から豊かになろう」ってあるけど、より社会的圧力の少ない生活によって中間層の家庭が幸せになることが大切だと思います。「安心」を超えて僕はもっとたくさんのハッピー、楽しさを日本社会に欲しいです。
ヤス:ハッピーもそうだけど、安心さえできない人が多いっていうのが今の状況だよね。だからまずは最低限生きるための「安心」からだと思う。今の日本では、自分は障がいがないから、外国人じゃないから、別にそういう人が排除されても自分には関係はないって考えてしまう人が多いんだと思います。でも、もし、そういう立場の人がほんとうに置いていかれちゃう社会になったときに、次はどういう属性を理由に、誰が社会から排除されるかわからない。今は大丈夫でも、次はあなたの番かもしれない。だから性別や宗教や人種や障がいの有無など、どんな属性の人でも、生きている限り「安心」を与えられる社会であってほしいと思います。
うみ:命に線引きがない社会がいいよね。
わこ:やっぱり「安心」って多様性を認めることと一緒のような気がする。究極、こうであるべきとか常識ってレールそのものがなくなったらいいな。このまま日本の社会から政治から、なにもかもが堕落していって、かつての日本を望郷するような未来はどうしても回避したいです。
うみ:福祉の現場を見てない国会議員が多いけど、池田まきさんのバックグラウンドとして長年介護士として働いていたことや、いまでもソーシャルワーカーとして社会の底辺といわれるところにいる人たちと関わってきたからこそ、「誰一人、置いてきぼりにしない」というスローガンの「誰一人」とはほんとに「すべての人」を含めてくれるんだろうなって思えて、政治を信じれない気持もあるけど、信じてみたくなりますね。