『世界から見た日本、日本から見た世界』☆第三部☆

掲載日:2017.01.24

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☆特別インタビュー☆
 2016年4月衆院北海道5区補選では野党共闘が実現しただけでなく、老若男女、多くの市民からたくさんの支持が寄せられました。その中には、海外に留学していた大学生もいました。今回は、彼らが見た日本の政治をテーマに取り上げ、紹介します。
(全5回+番外編の連載となります。内容は2016年11月にイケマキニュースvol.2として発行されたものになります。)
『第三部』  反 発
− 社会に実在するために −
うみ:ニュージーランドの子たちは、政治に対して、みんなこれからの自分の人生に関係があるからと、関心を持つ責任を感じている気がします。先日、大学の友達が、選挙に行かないというお母さんに対して、「お母さん選挙に行ってよ!」って説教してました(笑)。あと、同じ寮に住む20歳の友人が、私の住む町の市議選に無所属で出馬してます。
わこ:でもお金がかかるんじゃない?
うみ:市議選は自費だけど、市長選では市からお金が出るんだよ。日本では被選挙権が25歳以上と30歳以上だけど、ニュージーランドでは選挙権も被選挙権も18歳なんです。だから大学生でも出馬してる人がいます。特に私の街は大学生が多い町だから、市政に大学生の声を届けようという思いで立候補する学生がいます。
内田:いまアメリカでは、給付型の奨学金を得ている博士課程を含む学生全体によって労働団体の立ち上げが行われようとしています。給付型の奨学金を貰っている場合、所得税を納める必要があったり、博士研究という労働の対価として奨学金を貰っているという感覚をアメリカ人は持っているから、労働者としての権利を行使しようという活動が今全米の私立大学で広まっています。僕の通っているコロンビア大学がその運動を牽引していて、僕は運営側としてその活動に少し携わることができているわけなのだけど、どれだけアメリカの学生が学生の段階から積極的に社会権とは何かを理解して、自分で思考し社会の中で努力しているかを知りました。おかしいことにはおかしいと言い、また当たり前の権利を守るために行動する力が日本の学生にはあまり見られないですね。僕にとってはアメリカの環境のほうが居心地がいい気がします。
ヤス:フランスではみんなよくデモに参加してます。最近も、労働条件を改悪する法律に反対して頻繁にデモしてるし、一度に集まる人数がすごいです。日本ではデモやストライキに参加したっていうと、周りから引かれることもあるけれど、フランスではそれが普通だし、みんな政治の話をするのも大好きです。
うみ:デモとかって家族で参加する人もいるの?
ヤス:うん、多いよ。
わこ:家族内で意見が違ったりしたらどうするんだろう…。
うみ:やっぱり海外って子どもであろうと、基本的に人をひとりの人間として尊重することが当たり前とされているから、家族で意見が違ってもお互いを尊重し合える関係は崩れないイメージがあります。一方日本では、女性が男性の許へ嫁ぎ、そこの家のしきたりや思想に従事しなくてはいけないといった文化がむかしからあり、現代でもまだそういった風潮は見られますよね。私の知り合いにも、家族がデモに参加したことが原因で家庭内別居になった方がいます。それだけ意見が違うってことが許されない空気を日本では感じます。
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− 高すぎる学費 −
ヤス:ツイッターで話題になってたけど、日本女子大学では一年間休学するために60万円もかかるらしくて、びっくりしました!フランスではそもそも学費が完全にタダだし、ヨーロッパはイギリス以外、学費はほぼタダな国が多いと思います。留学生でも学費はタダだし、それにパリや周辺地域でのあらゆる交通機関が使えるようになる定期券が学生なら安く買えます。フランスは外国人にでも間取りに合わせて住宅補助が支給されるから、物価はすごく高い国だけど、学生が安く暮らすためのサービスが充実しています。
わこ:私はいま大学を半年休学してるんだけど、なんにも払ってないですよ。普通に休学するんだから学費払う必要がないんです。手続きとかも全く不要で、学期中に学びたい教科の申し込みをしなければ実質休学ということになります。簡単すぎてむしろ不安になるくらいです。だから休学するって選択をすることがすごい珍しいことでもないし、「ちょっとバックパッキングでタイに行ってくるからまた来年!」って言って一年休学した友達もいたし、別の例だと、近いうちに母国の兵役に従事しなくちゃいけないから休学を予定してる男の子もいました。休学してほかの世界を見ることで視野も広がるし、ちょっと勇気は必要だけど休学はいつでも自分で選択できるチャンスであると捉えられています。
うみ:本当に日本の、特に私立の学費は高いですよね。この前ある女の子の話を聞いて、驚いたことがありました。彼女は大学に行きたい意志があったけど、諦めてしまったらしいのです。なんでかというと、お母さんに、大学に行くと奨学金を借りることで借金ができて、将来結婚して仕事をやめることになった時、その借金を旦那さんに払ってもらうというのは迷惑になるから、大学に行くのはやめなさいと言われたらしいのです。
内田:アメリカの場合、博士課程の学生は基本的に全員給付型の奨学金を貰えます。だけど、学士や修士の学生の置かれている状況はかなり悲惨で、学費が法外な上に奨学金制度も非常に限られているため、学生ローンを一千万円以上抱えていることはザラにある話。しかも、学生ローンの場合は破産が効かないため、事実上完済するまで一生ついて回る重荷になります。この現状に付け込んでアメリカの軍閥は、入隊すれば学生ローンをチャラにしてあげるよ、と甘い誘い文句で新規入隊者を勧誘している節があるのも事実です。
わこ:その悲惨な状況は日本の奨学金制度とそっくりだね。私の日本にいる友達の多くも奨学金を借りて大学や大学院で勉強しています。ある子は既に八百万円の借金があるってネタにして笑ってたけど、正直シャレにならないですよ。八百万なんてどうやって返したらいいかわかんないじゃないですか。お金持ちだけが教育を受けられるなんていつの時代に戻ったんだよってほんとうに厭きれます。国の未来を想うなら、これからの将来を担う世代に誰にでもフェアな教育環境を与えるべきですよ。