災害対策と要支援者への対応について

掲載日:2016.04.20

            災害対策と要支援者への対応について
                                    池田 まき

○私は防災士として福祉施設のBCP策定や被災者支援に携わってきた経験から、災害時の避難における要支援者の避難行動支援のあり方について、考え方を明らかにしたいと思います。

○在宅の障がい者や高齢者、透析患者など避難に支援を必要とする方々には、災害の状況や避難場所などの情報がなかなか伝わりません。災害時において要支援者一人ひとりの避難誘導、避難所での生活支援などを迅速かつ的確に実施するため、誰が支援して、どこの避難所に避難させるかをあらかじめ定めた「避難支援個別計画」を策定しておき、地域ぐるみで支援することが重要です。 

○また福祉施設にいらっしゃる方々の避難も考えなければなりません。東日本大震災後、企業をはじめ福祉施設のBCPを策定するところが増え、事業の迅速な復旧の必要性が理解されてきました。しかしいまその施設が大丈夫でも、今回の熊本地震のように断続的に大きな余震が続くとどうなるか分かりません。一刻も早く避難すべきですが、余震が続く中、施設職員だけで搬送することは難しく、福祉のネットワークで救助に行こうとしても、逆に現地に負担をかける恐れもあります。
3日以内に避難の必要な要支援者を搬送する手配を広域で実施するよう、政府に要請すべきと考えます。広域避難先として福岡など九州圏内で受け入れ可能施設があれば良いですが、極論すれば北海道、札幌でも可能だと思います。要支援者の搬送は国の責任で行い、受け入れ体制は自治体や施設、人手は社協など福祉のネットワークといったように、役割分担し対応することで実現可能です。余震の危険がある地域に派遣する必要もありません。

○医療ではDMATという仕組みがあり、全国的な連携で震災などに対応していますが、福祉分野では、民間や社協などに依存している状態です。熊本地震では、20日時点で避難生活中に亡くなる震災関連死が11人に上っています。東日本大震災でも震災関連死が多数発生しました。このような死を防ぐためには、常設の支援組織を設けるなど、災害福祉の取り組みを政府の責任で充実・強化すべきです。

○さらに今後は、「地域継続計画(DCP)」や「地域継続マネジメント(DCM)」の普及を進め、企業・住民・行政が協働して、個々の会社や個人だけでは解決できない、ライフラインや交通インフラ等の早期復旧方法の検討、避難場所や避難ルートの整備、災害時の情報発信と共有、効果的で継続的な防災訓練、防災対策のノウハウの共有など、災害に強い地域づくりに取り組むことが求められます。そのことが地域の活力を保ち、地域の産業の継続にもつながると考えます。